研究課題
平成20年度はまず前年度に実施した予備的な探索実験で明らかとなったいくつかの間題点を解決するため、各検出器のメンテナンス作業を行った。平成20年度はMEG実験最初の本格的な探索実験が予定されていたため、検出器特性を理解し、詳細な較正を行うことに重点を置き、慎重に実験の準備が進められた。特に実験の鍵を握る液体キセノン検出器の較正作業は、パイ粒子ビームの荷電交換反応により生じる55MeVガンマ線を用いて入念に行われ、平成20年8月およそ1ヶ月間かけて検出器アクセプタンス全域での分解能の測定、エネルギースケールの較正などが行われた。探索実験用トリガーの調整などを行った後、9月半ばにいよいよ探索実験データ取得を開始した。頻繁に検出器較正用データを取得し、検出器の安定性をモニターしつつおよそ3ヶ月間探索実験データを収集した。実験中液体キセノン検出器の性能向上を目指し、液体キセノンの純化が続けられ40%程度の光量改善を実現した。光量の変化はいくつかのツールにより慎重にモニターされていたため、探索データ解析にはほとんど影響がないことがわかっている。12月末のビームタイム終了後は、取得したデータをもとに最初のμ→eγ探索解析が行われた。PSI研究所の共同研究者が担当するドリフトチェンバーシステムの高電圧回路の放電問題により、陽電子スペクトロメータの測定効率が予想より低かったため、探索データの統計量は十分とは言えなかったが、既に現在の実験上限値とほぼ同じ測定感度を達成していることが判明した。なお、平成20年9月に予定されていた電子回路更新作業は、PSI研究所の海外協力研究者により開発中の新型電子回路チップに不具合が見つかったため、翌年度に繰り越された。問題点を解決した後電子回路更新は無事行われ、平成21年9月までに検出器のメンテナンス作業を終了、平成21年度の探索実験を実施することができた。
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Cryogenics 49
ページ: 254-258
Annual Review of Nuclear and Particle Science 58
ページ: 315-341
http://www.icepp.s.u-tokyo.ac.jp/meg/