研究概要 |
今年度は平成17年8月9日〜14日にわたって,北海道札幌において長期滞在型研究会を開いた。講師としてドイツからKlaus Behrndtを招聘してflux compact化に関する講義を数回にわたって行った.またセミナーなどを通じて,ポスドクや助手などの若手を中心とした約30名の参加者による活発な議論や情報交換が行われた。 江口は現在大きな論争を巻き起こしているflux compact化やstring landscapeの問題に関係して、カラビーヤウ多様体のモジュライ空間の特異点付近でタイプII超弦理論の真空の分布密度の振る舞いを調べた。モジュライ空間の特異点付近では、(1)非可換ゲージ対称性が生成される、(2)質量の無い物質場が生成される、(3)N=2超対称性を持つ4次元の共形場の理論が生成されるなど興味ある非摂動的な現象が起こる.江口は真空の分布関数の値そのものは特異点で発散するがその積分は有限である事を示した。弦理論の真空は特異点付近に集中しているため、この結果はタイプII弦理論の持つ真空の数が全体で有限である事を示唆している。 川野は超対称性の力学的な破れを示す現象論的に興味深いモデルである,スピン表現を持つSpin(10)超対称性ゲージ理論のSuperconformal固定点についてa-Maximizationという最近編み出された手法を用いて,詳細に調べた。 伊藤は重力光子(グラビフオトン)を背景場とする超弦理論の低エネルギー有効理論となる非反可換超空間上のゲージ理論の構成とその非摂動的量子効果について研究を行った。まず非反可換N=2調和超空間上のU(1)ゲージ理論と変形された超対称変換を変形パラメータの一次まで計算した。さらに非反可換N=1超空間上のN=2超対称U(N)ゲージ理論のインスタントン解と中心荷の計算を行い、非自明な効果があることを示した。
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