本年度は以下のような研究を行った。 ●超対称大統一模型において、右手型ニュートリノがもつ結合定数の果たす役割を検討した。ビッグスのポテンシャル構造、フェルミオンの質量統一問題、フレーバー物理、宇宙の暗黒物質の問題について、詳細な数値解析とともに将来の素粒子実験における影響を考察した。 ●ニュートリノ領域における世代間対称性の破れの新しい機構を提唱した。右手型ニュートリノが(有限な)余剰次元空間を伝播する場合に、非自明な境界条件が対称性の破れを導く。この破れにより、tri-bimaximal型の世代間混合などの、特徴的な現象論的帰結が導かれることを見いだした。 ●D項による超対称性の破れの効果は、大統一理論における物質場の世代構造と密接に関わっている。超対称性の破れの詳細に依らないスカラー質量間の関係式を見いだし、超対称粒子が観測された場合にその質量スペクトラムと組み合わせることにより、直接的に統一理論の世代構造を探ることが可能であることを示した。 ●非可換世代間対称性は物質場の質量項を統制する。非自明表現のヒッグス場による世代間対称性の破れを、ポテンシャルをあらわに扱うことにより系統的に考察し、理論の真空において質量項にゼロ構造が生じる機構を提唱した。対称性の非可換性のため非自明な世代間混合が自動的に導かれる点が興味深い。また統一理論への適用可能性についても議論をおこなった。 ●超対称性を破る項への重いカイラル超場による閾値効果を取り扱う方法について研究をおこなった。とくにカイラル多重項自身が超対称性の破れをもつ場合に適用可能な、これまでにない評価法を確立した。その一つの応用として、アノマリー伝達による超対称性の破れの紫外不感受性を摂動の全次数であらわに確認した。
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