研究概要 |
1.リトルヒッグス模型における暗黒物質の研究 標準模型の階層性問題を解決する試みとして、最近リトルヒッグス模型が提案されてる。この模型の中でとくにTパリティーと呼ばれる離散的対称性と課した模型は宇宙の暗黒物質の候補となる新粒子を含んでいて現象論的に興味深い。この研究では、この模型で予言される暗黒物質の候補粒子の初期宇宙での残存量を計算し、現在観測を決められた暗黒物質量と合致するためにはどのような模型のパラメーターをとるべきかを明らかにした。次に、この暗黒物質がわれわれの銀河のハローで対消滅して生成する陽電子のフラックスを計算し、近い将来の観測(PAMELA,AMS-02)でどのように探ることができるかを示した。この結果は論文としてまとめて投稿中である。 2.超対称模型とB中間子の物理 超対称模型はクォークの超対称パートナー粒子が新たなフレーバー混合の原因となるため、Bファクトリー実験の様々な過程に観測可能な効果を与えることが期待できる。ここでは特に、B中間子がタウレプトンを含む終状態へ崩壊する過程を超対称模型で考え、超対称の破れの構造をどのように解明することができるかについて調べた。その結果、終状態がタウとニュートリノおよびD中間子タウとニュートリノの二つの過程は荷電ヒッグス粒子とクォークの結合を測るのに有効なこと、その結合は超対称粒子の量子補正を大きく受けることがあること、二つの過程に対する量子補正の相関を調べることによって超対称性の破れの構造に対する情報を得ることができることを明らかにした。 3.ブレイン宇宙における素粒子過程 ブレイン宇宙論では初期宇宙のスケールファクターの膨張の振る舞いが4次元宇宙とは異なるため、宇宙初期における素粒子過程の関連する物理に変更が生じる。ここでは、熱的なレプトン数生成や超対称模型の暗黒物質の残存量の計算にどのような影響が現れるかを明らかにした。
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