ガン治療の最も困難な点のひとつは、ガンの転移である.ガンが転移する際にはガン細胞が患部より移動し、血管やリンパ管に浸潤すると考えられている。このため、ガン細胞の運動性を抑制することでガンの転移を抑制することが期待される.しかしながら、現時点において細胞運動の詳細なる機序は未だに明らかでない.特に細胞運動時の糸状仮足や葉状仮足の細胞表面の動態やその運動機構は不明のままである.そこで、蛍光性ナノ粒子を用いて、運動中の細胞表面の詳細な観測を試みた.抗HER2抗体であるHerceptinをビオチン化し、アビジンを結合した蛍光性ナノ粒子と結合させた.これを乳ガン細胞KPL-4と混合し、レーザー共焦点顕微鏡で蛍光観察を行った。観察像の3次元位置は、新たに開発された装置にて解析された.330ms毎に9枚の共焦点像を取得し、ひとつの3次元画像を構築する。そしてCdSe粒子の3次元位置は、蛍光強度を重みとした輝点の重心を計算する我々の開発したソフトをもちいて求められた.葉状仮足が進展している部位における輝点位置の経時変化を3次元測定できた(図)このような一方向性の粒子の運動は細胞内に取り込まれた後にモータータンパク質によって運ばれているとも考えられる.また、細胞表面上を膜と共に移動しているとも考えられる.このような蛍光性ナノ粒子の3次元ナノイメージングが開発されたことにより、生体内においても患部からの細胞転移を高精度で検出する道が開けたと言える。今後、マウスにおける移植ガン組織の検出にこの3次元ナノイメージングシステムを応用する。
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