研究概要 |
癌を認識する抗体に光機能や運動機能を付加して,独自に開発する高感度顕微鏡で癌の局在を同定することを計画した.癌に結合する光機能性材料としてCdSeナノ蛍光粒子は蛍光が安定であり,しかも近年市販され始めたのでこれを選んだ.乳癌細胞に特異的に結合することが知られている,抗Har2抗体は人体への治療が認可され,Herceptinという薬品名で売られている.この抗体にQ-dot社製のCdSeナノ粒子を結合した.これを,乳癌細胞と反応させたところ,特異的に反応することが確認された.さらに,乳癌細胞に結合したCdSeナノ粒子の3次元位置をレーザー共焦点顕微鏡で330ms毎に計測できる新しい装置を渡辺とともに開発した。その結果、混合するHerceptin-CdSeナノ粒子が細胞表面に結合して,蛍光顕微鏡にて輝点が観察された。乳癌細胞に取り込まれたナノ粒子の位置の経時変化を3次元的に測定できた.現在のところ,3次元位置分解能は~20nmであるので,8nm程度のタンパク質分子の挙動はまだ観ることができないが,時間空間分解能を上げた装置を開発しているので近い将来,細胞内のナノ粒子の動きを数nm精度で追跡することができるであろう.また,医学部の大内研と共同でネズミにナノ粒子を静脈注射して,CdSeナノ粒子の生きた動物内の腫瘍の三次元観察を行っている.人の癌の早期発見や外科的手術の際に癌の位置を特定することに応用を目指した.
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