研究概要 |
本研究では天然に近い構造を有したフィラメント上において、ミオシン1分子の力学特性を解明した。フィラメント自己組織化の条件を検討し,機能的なミオシン分子数が2-6分子しかないフィラメントを作製した。このフィラメント上におけるミオシン1分子の動きと力を、レーザートラップナノメトリーにより計測した(Fig.1)。その結果、ミオシンは1回の力発生で5nm動きこれを何回も繰り返し数百nm運動し、最大12pNの力を発生した.このときの最大効率は50%程度と見積もられた.運動距離や効率が筋肉で得られた値に合致したことから,筋肉内でのミオシン1分子の基本特性が5nm変位と12pNの力であることが明らかとなった。したがって、ミオシン1分子の機能は、複数分子を含むフィラメント化で、向上することが示唆された。これは、力を出していないFig1のグレー色のミオシン分子がアクチンと結合し、アクチンの解離を抑え、力を出すピンク色のミオシンが最大力を発揮出来る状態を作っているためと考えた。このモデルではグレー色ミオシンが内部抵抗となれば,力やエネルギー効率が下がるはずである.モデルを検証するために,量子ドットを用いてミオシンの極微小の伸びと抵抗の関係を測定できるように蛍光顕微鏡を改良した.その結果,量子ドットの蛍光像の位置検出精度を、0.8Åまで上げることに成功した。今後は、この装置でミオシン1分子の伸びと抵抗の関係を計測し、モデルを検証する。
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