研究概要 |
細胞内のモータータンパク質1分子の運動は、昨年はエンドサイトーシスを利用した方法で、間接的な観察に成功した。しかしながらこの方法では標識タンパク質は小胞内にあるので、細胞質タンパク質と直接は相互作用ができなかった。そこで今年度は、量子ドットにタンパク質を結合した複合体を細胞に直接導入渉る新しい方法を確立した. 実験では、市販の通常はDNAをトランスフェクションさせる試薬(FuGENE-HD)に標的分子であるファロイジン(アクチン線維に結合), tubulin抗体(微小菅に結合)やキネシンを結合した量子ドット(QD)を混ぜて, これを培養細胞に導入することに成功した. ファロイジン-QDは細胞周辺にあるアクチンに結合し,tubulin抗体一QDは核方向に直線的に分布する微小管に結合することが確認された. モータータンパク質キネシンは, 微小管上を不均一の速度で動いた. 細胞内のキネシンの最大運動速度は2μm/sであり、精製し左キネシンを用いたInvitro motility assayにおける最大速度1μm/sの約2倍であった. 一方、微小管-QDの速度は低頻度ではあるが1μm/sとなった。キネシンは微小管の上を動くことから、今回観察したキネシンの最大運動速度は微小管に対するキネシンの運動と微小管の運動の和であることが強く示唆された。このように、細胞内の分子を直接観察することで、新しい細胞像が描けてくることが明らかとなった。
|