研究概要 |
シグナル伝達のなかでも、TGFβシグナルはこれまでに最もよく研究されてきたシグナルである。TGFβシグナルはSmadをメディエーターとしているが、Smadの活性化はリン酸化によって制御されている。TGFがTGFβリセプターに結合するとsmad2, 3がリン酸化されるが、このリン酸化Smad2, 3にPin1が結合し、分解を促進させる。したがって、Pin1が高発現すると細胞の増殖が促進されることが予測される。これら一連の研究は癌研生化学部との共同研究で行った。Smad2, 3の分解に関わるユビキチンE3リガーゼSmurf1, 2によるSmad2, 3のユビキチン化をPin1が制御しているのではないかと推察している。我々はPin1の多様な生物活性を人工的に制御したいと考えて天然物からの薬剤の発見を目指している。大きな問題の一つは、プロリン異性化酵素阻害剤のhighthroughput screeningが確立されていなかったことであるが、我々は、高感度CCDカメラFDSS-6000(浜松ホトニクス社)を用い、阻害剤をhigh throughput screening探索する方法を確立した。さらに、Gas7が、リン酸化タウと結合して微小管重合を制御することを精製したチューブリンを使って明らかにし、また、高濃度では微小管に直接結合して、キネシンの運動性を制御していることを明らかにした。この他、原田らはゲノム安定性維持にエピジェネティック制御が関与する機構の一つとしてJNO80クロマチンリモデリング複合体が停止した複製フォークの進行再開に必要であることを明らかにした。
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