研究概要 |
ウニ精子鞭毛を用い,振動運動の基本となる微小管の滑りの切り替えを引き起こす鞭毛の屈曲条件を特定した.その結果,鞭毛の振動の誘導には,両方向性の一対の屈曲形成が必要であること,ADPはこの滑りの切り替え頻度を増大させること,ADPによる(ダイニンへの結合によると思われる)振動誘導の効果は、この一対の屈曲形成の屈曲の方向性とは独立であること(すなわち一対の屈曲形成そのものが重要であること)が明らかとなった.ホヤ精子の鞭毛運動活性化時に起こるタンパク質変化を解析した結果,外腕ダイニン,内腕ダイニン,ラジアルスポークのサブユニットにリン酸化,脱リン酸化が起こること,14-3-3タンパク質をはじめとするシグナル分子のリン酸化,脱リン酸化が起こることが明らかとなった.また,新規カルシウム結合タンパク質カラクシンは10^<-8>M〜10^<-7>Mという低濃度のカルシウム存在下でダイニンと相互作用し,活性の制御を行なうことを明らかにした.クラミドモナス外腕ダイニンに存在する3種類の重鎖(αβγ)のモーター活性の違いについて以下のことを調べた.1)γ重鎖のモータードメインを欠失する変異株をはじめて単離し,その機能と軸糸内局在を明らかにした.2)この変異株を含むさまざまな外腕欠失株を利用して,3種類の重鎖の機能の違いを調べたところ,γ鎖は他の重鎖の活性を抑制する機能をもつことがわかった.ダイニン分子内で,これらのモーターは単に加算的に働くのではなく,複雑な相互作用をしていることが示唆された.
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