研究課題
分子モーターキネシンの細胞内での活性状態を一分子レベルで検出することを最終的な目標とし、今年度はまずin vitroで運動中のキネシンの構造変化を一分子レベルで検出するための方法の確立を行った。構造変化を検出するための方法としては、キネシンの様々な2点間の距離変化を蛍光共鳴エネルギー移動法を用いて一分子レベルで観察するというやり方を用いた。具体的には、機能を損なうことなくキネシン二量体の二か所に蛍光色素を導入する方法を確立し、色素間の蛍光共鳴エネルギー移動(FRET)効率を一分子レベルで測定する顕微鏡システムの確立を行った。(1)キネシンダイマーに2つのシステインを導入したヘテロダイマー発現系を作成した。2ステップのアフィニティカラムで精製することにより、ヘテロダイマーを選択的に単離することができた。このキネシンをSH基反応性のドナーとアクセプターの色素(Cy3とCy5)標識し、全反射顕微鏡で観察したところ、野生型キネシンとほぼ同じ速度で微小管上を運動する様子が見られた。(2)一分子レベルでFRET効率を測定するために、全反射顕微鏡に2波長同時観察ユニットを導入し、ドナーとアクセプターの蛍光像を同時にカメラに投影できるようにした。この顕微鏡システムを用いて、Cy3とC立5で標識されたキネシンを観察したところ、Cy3を励起した際に、一部の分子でCy5が蛍光を発している様子が観察された。これはCy3とCy5の間のエネルギー移動によるものである。さらに、Cy5が一段階で退色し、それと同時にCy3の蛍光が回復する様子が見られ、エネルギー移動が一分子レベルで起きていることが確認された。今後はこの方法を用いて、キネシンの運動中のFRET効率変化を検出することにより、運動中のキネシン内部で起きている構造変化を可視化することを試みる。
すべて 2004
すべて 雑誌論文 (2件)
Science 303
ページ: 676-678
Nature Structural and Molecular Biology 11
ページ: 142-148