研究概要 |
(1)ダイニンモータードメイン(MD)の大量発現系を構築し,高純度のMDを得ることに成功した.(2)リンカー末端にGFPを融合し,AAAリングにBFPを融合したMDを用い,ATP加水分解サイクルにともなうリンカーの動きをFRETシグナルの変化として追った.この結果,ATP加水分解にともないリンカーが2つの位置の間を行き来することがわかった.MDには3箇所のATP加水分解部位があるが,そのうちのひとつがこのリンカーの動きにかかわっていた.(3)リンカーの動きがパワーストロークとなってダイニンの動きを駆動するというモデルの当否を確かめるため.MDのさまざまな位置にビオチンタグを挿入し,これをストレプトアビジンでガラス基板上に固定した.リンカー末端近くで固定されたMDは速い微小管滑りを駆動したが,リンカー末端から離れると,しだいに滑り速度は低下し,最後には数十分の一にまでなった.このことは,リンカー末端がレバーアームのように動いているというモデルを支持する.一方,リングを固定してもゆっくりした微小管滑り運動は停止しなかった.この滑り運動は速い滑り運動と同じ方向性をもっていた.このことは,MDによる微小管滑り運動には,パワーストローク機構によるものと,それとはまったく異なる機構によるものがあることを示している(Shimaら,PN4S2006).(4)MDを構成する6個のAAAモジュールのうちAAA1,AAA3,AAA4にはATP加水分解部位があり,AAA2にはADP結合部位があることが変異導入実験であきらかになった.AAA3とAAA4のATP加水分解サイクルはダイニン力発生で中心的な役割を担っているAAA1のATP加水分解と強く共役しており,これらがダイニン力発生でどのような役割を担っているか興味深い.
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