本研究では、分子イメージングプローブの開発と生細胞におけるイメージング実験を通じて、カルシウムシグナルを構成するナノシステムの構築と制御の問題にアプローチしている。本年度の分子イメーイングプローブ開発として、低分子・蛋白質融合型分子プローブの高効率作製技術の開発を目指した。具体的には、96穴プレートフォーマットを用いて多種類の候補プローブを同時に作製したうえでハイスループットに性能評価を行うことによって、短期間に目的の分子プローブを得ることを可能にする技術の開発を目指し、PCRによる変異導入、大腸菌の形質転換、蛋白質発現、蛍光色素ラベルといった各ステップにおいて最適な反応系の構築を試みた。特にボトルネックになっていたのは形質転換後〜蛋白質発現のプロセスであったが、半固体培地を用いて形質転換株をセレクションした後に半固体培地を融解し液状化した状態で蛋白質を発現させることによって解決を図った。その結果、2〜3日で千種類程度のプローブの候補をスクリーニングする系の構築に成功し、実際にグルコース、アラビノース、グルタミン酸といった生体分子について高い性能を持つ蛍光プローブを得ることができた。さらに、用いる低分子蛍光色素を変えることによって、青〜赤といった様々な蛍光スペクトルを持つプローブを作製可能であることが示された。多色化によって、複数の生体分子を同時にイメージングが可能になり、ナノシステムを構成する複数の分子の挙動を動的に捉えて理解するために重要な技術となると考えられる。
|