研究課題
○ナノスケール解析による核内構造タンパク質の動態の解明:(1)動態解明のための道具をそろえるため、細胞核質、核マトリックスおよび分裂期クロマチンに対するモノクローナル抗体ギャラリーを作成し、核内および分裂期染色体上の染色パターンを確定し、その結果をホームページ上にアップした。これらのモノクローナル抗体に対する抗原を検索し、21種類の抗体に対する抗原を決定した。それらの中には、新規タンパク質であるJmjCドメインタンパク質に対するものを含む核小体特異的抗体12種類の他、核内にあるサイトケラチン18のみを特異的に染色する抗体、核内にあるαアクチニン4のみを特異的に染色する興味ある抗体も含まれていた。(2)細胞周期に依存した核膜とクロマチンの結合調節機構を、アフリカツメガエル卵抽出液を用いた試験管内反応で解析し、核膜内在性タンパク質がタンパク質脱リン酸化酵素1によって脱リン酸化されることによって膜がクロマチンに結合できるようになることを明らかにした。またそのときに核膜内膜タンパク質のラミンB受容体が主に寄与することを示唆した。また同様な系を用いて、核膜内膜タンパク質のエメリンとクロマチンの細胞周期依存的解離・会合機構を解析し、i)エメリンも他の核膜タンパク質と同様に、クロマチンとの結合はリン酸化によって調節されている。ii)分裂期の卵抽出液によってエメリンの175番目のセリンがリン酸化されることによってクロマチン上のBAFタンパク質との結合が抑制されることを明らかにした。(3)ラット核難溶性タンパク質のプロテオーム解析を行い、28種類のタンパク質を同定した。これらのタンパク質の中に見いだされた新規タンパク質ISP36の機能解析を進め、ISP36が核内のクロマチン間にあって、核構造とRNA合成・分解をつなぐタンパク質であることを示唆した。○核研究に応用可能な新しいナノスケール解析法の開発:(1)高速AFMの応用法の確立を目指し、酵素とDNAとの反応機構の解明に、また、GroEL/ESのATP/ADP存在下での反応機構の解明に成功した。本装置は世界で唯一の「液中での生体試料観察が可能な高速原子間力顕微鏡」である。(2)GSH-ポリエチレングリコールリンカーを用いた「AFM-カンチレバーの修飾法」を確立した。この系を用いて、核膜孔複合体とインポーチンとの間の力学測定に成功した。また、ラミンB受容体とクロマチンとの結合力も測定した。(3)ラミンB受容体とクロマチンとの結合の解析において、ピコトレックモードを用いて、AFM画像とその画像上でのラミンB受容体の結合部位の情報を同時取得する方法(Recognition Imaging法)を確立した。
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