研究課題
本研究課題では、細胞核の重要な高次構造の1つである核膜孔複合体に焦点を当て、この複合体の重要な機能である核-細胞質間蛋白質輸送の制御を指標にして、その分子構築ならびに分子動態を明らかにすることを目的として研究を行っている。本年度は、昨年度に引き続き、核膜孔のダイナミックな動態を解析するための実験系として、細胞分化の観点からの研究を進めた。具体的には、筋芽細胞であるマウスC2C12細胞を用い、細胞を未分化状態で増殖を続けさせた場合と分化誘導させた場合とで比較した場合、核膜孔複合体がどのように変化するか、また、変化するのであれば、その動態を個々のヌクレオポリンに着目して解析するとともに、発現量、局在が変化するヌクレオポリンがあるかどうかを解析した結果、NUP358の発現量が分化に応じて顕著に増加することがわかった。また、原子間力顕微鏡を用いて、核膜孔複合体の構造変化も解析したところ、分化に応じて、NUP358が局在していると思われる、核膜孔の細胞質側の直径が大きくなることを発見した。一方、富ロイシン型核外輸送シグナルを持つ蛋白質の核外輸送効率が、分化細胞では増加していることがわかった。さらに、RNAiの方法を用いて、NUP358の発現を低下させると、分化が抑制されることもわかった。これらの結果から、筋細胞分化に応じて、NUP358の発現が増加するとともに、核膜孔複合体の全体的な構造もダイナミックに変化し、機能的にも核内外の蛋白質輸送効率のバランスが変化して、分化に重要な役割をする因子の細胞質へ局在することが引き金となって分化が進行する可能性が示唆された。
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