本年度は、マルチカラー免疫蛍光抗体法を確立するために、8種類の蛍光波長を検出することが可能な顕微鏡を導入した。マルチカラーFISH法により多数の蛍光色素で標識された染色体標本を用いてこの顕微鏡の調整を行った。同時に、複数の蛍光色素で直接標識された一次抗体を用いた直接免疫蛍光抗体法を確立した。現在、これらの直接標識一次抗体を組み合わせたマルチカラー免疫蛍光抗体法の確立を進めている。また、核内ドメイン形成の基盤構造と関連すると考えられるRAD51蛋白質の過剰発現で形成される核内フィラメントの解析のため、フィラメントを形成しないRAD51ミュータント発現ベクターを作成し、その解析を開始した。 一方、紫外線マイクロ照射法とFluorescence Recovery After Photobleaching法を組み合わせた新しい核内蛋白質動態の解析法を用いて、DNA二本鎖切断に対する核高次構造レベルでの応答機構の解析を行い、その成果を学会発表した。さらに、細胞がDNA二本鎖切断を修復する過程では、複数の修復関連たんぱく質が様々なタイミングでDNA損傷部位に集積すること、細胞が致死的なDNA損傷を受けた場合には、細胞死に関連するPML bodyが集積することを報告した。さらに、転写抑制因子Bach2が形成する核内ドメインBach2フォーカスには転写のco-repressorが存在する、Bach2フォーカスに取り囲まれたPMLボディにはco-activatorが存在することを示した。
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