本年度の年次研究計画に従って解析を行い、以下の研究成果を得た。まず、snRNAの核内輸送と核内でのダイナミクスに関わる因子め同定と機能解析を行うため、snRNAの核移行可視化解析系を確立した。snRNAの可視化解析は、スプライシングに関与するU2snRNAを細胞核から精製した後、Cy3によって蛍光標識し、HeLa細胞の細胞質に蛍光snRNAをマイクロインジェクションすることによって行った。その結果、蛍光snRNAは核内に移行後、核小体以外の核質内でドット状に局在化することが示された。抗体染色解析により、核内でのU2 snRNA局在化部位はカハールボディーであることが判明した。更に、インジェクションした細胞を薬剤で処理し、Arp要求性等を解析した結果、snRNAの核内移行はエネルギー非依存的に行われることが示された。また、転写阻害剤処理により、カハールボディーから核小体周辺部にsnRNAが移行することが明らかとなった。今後、その核内分布変化の生物学的意義について解析する予定である。また、転写阻害によって蛍光mRNAが蓄積する核内構造体TIDRは、パラスペックルとは異なる新規核内構造体であることが、2重染色解析によって示された。次に、核スペックルに安定的に存在するpdy(A)^+RNAの実体を解明するため、24時間転写阻害した細胞の分離核からpoly(A)^+RNAを分離し、それらのcDNAクローニングを行った。得られたcDNAクローンの内、任意に選択した48クローンについて、塩基配列を決定した。その結果、mRNAのcDNAも存在していたが、多くは、Alu配列などの反復配列を含む、ORFを持たないnon-coding poly(A)^+RNAであることが判明した。今後、さらにスクリーニングを続行すると共に、今回得られたnon-coding poly(A)^+RNAが核スペックルに存在するか、in situ hybridization法などにより、確認する予定である。
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