1)U2核内低分子RNA (U2 snRNA)の核内ダイナミクスを解析するため、前年度確立したsnRNA細胞内可視化系を用いて解析した。細胞質にマイクロインジェクションしたU2 snRNAは核内に移行し、カハールボディに集積するが、標識効率等を改善したところ、内在性U2 snRNAと同様に、核スペックルにも分布することが示された。新しく調製したU2 snRNAの蛍光核内移行はATP非要求性の反応であった。また、転写阻害剤アクチノマイシンD処理細胞において、蛍光U2 snRNAは核小体周辺部に集積するなど、内在性U2snRNAと同じ核内動態を示した。更に、FRAP解析により、U2 snRNAがカハールボディに結合と解離を迅速に繰り返していることが明らかにされた。これらの知見は、カハールボディの機能を解明する上で大変興味深い。 2)16年度における解析により、核スペックルに安定的に局在するpoly A^+ RNAのcDNAをクローニングした。それらのcDNAについて塩基配列を決定したところ、TB7遺伝子など9種類のprotein-coding RNAと、13種類のAlu配列を含むnon-coding RNAのcDNAが同定された。それぞれについてin situ hybridizationを行い、核スペックルに分布するか解析したところ、いくつかのクローンは核スペックル様の分布を示すことが判明した。現在、oligo dTプローブとの二重染色によって核スペックルに分布しているか解折中である。 3)核スペックルの形成を阻害する天然化合物を分離することを目的として、スプライシング因子SF2の核スペックル局在に影響を与えることを指標に、約200種類の放線菌培養上清をスクリーニングし、SF2の核内分布が異常となる上清を9種類同定した。今後、それらの培養上清から作用を示す化合物を精製していく予定である。
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