研究概要 |
申請者らは,傷害によって小胞体から誘導されるオルガネラを見出しERボディと命名した.ERボディは外敵に対処するために植物が備えている全く新しい生体防御機構の一つであるという立場から,本課題研究では,小胞体を含む細胞内膜系の分化による生体防御システムの機構を明らかすることを目的としている.本年度の成果は下記の通りである. 1.細胞内膜系局在型GFPを発現するシロイヌナズナの子葉や根の表皮細胞では,ERボディは紡錘型の蛍光像として容易に可視化できる.ERボディが凝集する変異体katamari2(kam2)の原因遺伝子産物KAM2は,直径約1μmのuncharacterized compartmentsに局在しており,エンドソームの形成に関与していた(Plant Cell,2007). 2.ERボディが巨大化する変異体の原因は,PYK10のN末端側に存在するCys残基の変異であった.PYK10のpolymerizationにジスルフィド結合が関与していると考えられた(論文準備中). 3.ERボディ形成不全変異体nailではβ-glucosidase(PYK10)とJacalin-like lectins(JALs)の発現が顕著に低かった.ファミリーを形成しているJALsの遺伝子発現プロファイルと遺伝子破壊株の解析から,ERボディ系で働く候補JALを特定した.PYK10(ERボディの主要構成成分)とJAL(細胞質ゾルタンパク質)は細胞内局在性を異にするが,組織の破壊によって互いに相互作用し複合体を形成した.傷害を受けた細胞が破壊された時に,JALの働きによってPYE10のpolymerizationと活性化が調節を受けるという機構が示された(論文投稿中). 4.β-glucosidase(PYK10)は,他のオルガネラに蓄積されている配糖体(不活性型)を分解し,病原体に対して忌避作用をもつ物質を生成すると考えている.PYK10の内在性の基質を同定する目的で,nailおよびpyk10変異体のFT-MS解析を行っている(かずさDNA研究所との共同研究). 5.根で働くPYK10に対し,地上部ではthioglucosidases(TGG1とTGG2)が生体防御に関わっている.TGGは異形細胞(myrosin細胞)の液胞に局在し,myrosin細胞は植物の血管系ともいうべき葉の維管束に沿って分布していた(PCP,2006).
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