研究概要 |
我々は高等植物の環境適応戦略の一つである重力屈性の分子機構について、シロイヌナズナを用いた分子遺伝学的なアプローチを中心に研究を進めてきた。その過程で、小胞輸送が支える液胞機能が重力感受に必要であることを明らかにした。本研究では、液胞やそれに至る輸送系が、どのようにして重力屈性や形態形成などの高次機能に関与するのか、より具体的に分子レベルで理解することを目的としている。今年度は次のような研究を行った。 1)これまで、zig変異体の形態異常と重力屈性異常を共に抑圧する変異体(zip)を解析対象にしてきた。今年度はzip4を中心に解析を行ない、原因遺伝子がAP3-μサブユニットホモログをコードすること、zip4における抑圧にVTI12-SYP22複合体形成能増加は関与しない点において、zip1,zip3と異なることなどを明らかにした。現在、論文発表の準備を行なっている。 2)小胞輸送異常変異体で見られるアミロプラスト沈降異常とは異なる様式で、アミロプラスト沈降及び動態に異常を示すsgr9変異体の解析を進めた。SGR9は重力受容細胞内のアミロプラスト上に局在すること、sgr9の重力屈性異常は、アクチン重合を阻害するfiz1-type ACT2を内皮細胞特異的に導入することで,部分的ではあるが回復した。内皮細胞のF-アクチン動態を観察したところ、sgr9変異体中ではアミロプラスト周辺のF-アクチンの挙動に異常が認められた。SGR9はアミロプラストとその動態を制御するアクチンとの相互作用を調節する機能を持つと推測される。
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