研究概要 |
RNA編集は、遺伝情報をRNA上で書き換えるもので、植物ではプラスチドおよびミトコンドリアで頻繁に見られ、特定のC残基からUへの脱アミノ反応が起きる。RNA編集の標的となるCは正確に認識され、この認識には編集サイト周辺の30塩基程度(シス配列)が必要であることが示されていた。シス配列はトランス因子により認識されるが、トランス因子の実体は未知であった。 我々はNDH複合体活性を欠くシロイヌナズナ変異体crr4が葉緑体ndhD遺伝子の開始コドンを作るRNA編集能を特異的に欠くことを示し、PPRタンパク質であるCRR4がトランス因子の候補であることを示した(Kotera et al.,2005)。さらに昨年度、CRR4がndhDの編集サイト周辺に特異的に結合することを示し、葉緑体においてトランス因子の実体がPPRタンパク質であることを示した(Okuda et al.,2006)。 本年度、理研との共同研究で、NDH活性を欠くシロイヌナズナ変異株をさらに網羅的に解析し、葉緑体RNA編集を欠く第二の変異株crr21の単離に成功した(Okuda et al.,2007)。CRR4とCRR21はともにPPRファミリーのE+サブグループのメンバーであり、C末に高度に保存されたドメインを有する。RNA編集に関わるPPRタンパク質に共通のドメイン構造が存在することが示唆された。そこでCRR4のC末を削ったものをcrr4変異株に導入したところ、CRR4の機能を相補できなかった。一方、C末を欠くCRR4は、in vitroで正常なRAN結合活性を示した。この結果から、CRR4とCRR21のC末が、RNA配列認識以外のRNA編集に共通な機能に関わることが示唆された。そこで、CRR4とCRR21のC末を入れ替え、crr4とcrr21変異株にそれぞれ導入したところ、RNA編集能は回復した。PPRタンパク質のC末領域は、RNA編集反応を担う編集酵素との結合に関与するという作業仮説を立て、今後、編集酵素の同定を目指す。
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