通常飼育下で繁殖能があり(XX卵巣)、人為的に熱ショック(HS)により、卵巣からXX精巣へと性転換させることができるSry誘導モデルマウス(#44)を樹立した。#44のSry誘導ラインを用いた解析の結果、Sryによる雄化を誘導できる臨界期(精巣分化のcritical period)が11.0〜11.25dpc(12-14ts)であること、また、15〜16tsにおいては、中央部領域においてのみ、一部の細胞がSOX9陽性のセルトリ細胞に分化誘導されることが明らかとなった。このラインを用いて、1)Sryによる雄化誘導の臨界期と液性因子FGF9/WNT4との関連性について検討した。その結果、FGF9とWNT inhibitorであるsFRP2の添加により、SryによるSOX9発現維持の臨界期の延長が確認できた。しかし、精巣細管形成などの精巣への形態形成にはFGF9とsFRP2の影響は認められなかった。以上の結果から、初期のSryのnon-cell-autonomousな活性が精巣の形態形成に必須であることが判明した。さらに、2)11.5dpcのXXTg性腺を用いて、Sry誘導による様々な遺伝子の発現変化をマイクロアレイにより解析を行った。その結果、Sry依存的に発現量の上昇する7つの遺伝子を新たに同定した。Sryの標的遺伝子である可能性を現在さらに検討している。
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