研究課題/領域番号 |
16086207
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
柳瀬 敏彦 九州大学, 大学院・医学研究院, 助教授 (30239818)
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研究分担者 |
後藤 公宣 九州大学, 大学病院, 助手 (90284512)
岡部 泰二郎 九州大学, 大学病院, 助手 (40264030)
野村 政壽 九州大学, 大学病院, 助手 (30315080)
名和田 新 九州大学, 大学院・医学研究院, 教授 (10038820)
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キーワード | アンドロゲン受容体(AR) / アンドロゲン過敏症 / アロマターゼ / KGN細胞 / ELISA |
研究概要 |
性ホルモンは、性分化の終末段階の雌雄発現に必須で、その合成や作用の異常は様々な性分化異常を引き起こす。本申請ではアンドロゲン受容体(AR)作用機構、エストロゲン合成酵素活性と内分泌攪乱物質,PKAのAd4BPの活性化機構と胎児期副腎、性腺形成の関連,核内受容体LRH-1と卵巣分化の4つのテーマについて研究テーマを掲げ、平成16年度には特に、アンドロゲン過敏性機序におけるARの意義を中心に研究を進めた。 我々は性分化異常症のアンドロゲン不応症多数例の解析を通じてアンドロゲン受容体(AR)遺伝子に変異を認めない一症例において共役因子の異常を証明し、共役因子病という新しい疾患概念を提唱した。一方、アンドロゲン感受性亢進機序については、5α-reductase遺伝子をはじめ多因子による機序が示唆されているが、その機序はほとんど不明である。我々は血中アンドロゲン濃度は正常ながら、前頭部禿頭あるいは男性化を呈した多毛症の2女性患者より文書同意の上、陰毛部皮膚を一部採取し、同線維芽細胞を培養し正常ARを外因性に一過性発現したところ、両患者の皮膚線維芽細胞のMMTV-luciferaseによる転写活性の検討ではリガンド(DHT)非存在下にすでに軽度の転写活性を認めた。驚くべきことに共焦点顕微鏡画像下でもARの核移行と転写活性化の形態的指標であるクラスター状分布が認められた。この自験患者2例におけるリガンド非依存性の転写化機構のメカニズムとして、患者皮膚線維芽細胞の5α-reductase活性の亢進によるリガンドのDHTの供給過剰ではないこと、また、患者AR遺伝子の解析から、患者ARにはNuclear localization signal部位を含め、変異を認めないことを明らかにした。AR関連核局在化関連分子(Ubc9,SNURFなど)の発現異常や分子異常の有無について現在、検討中であるが、明らかな異常分子はいまだ同定されていない。アンドロゲン感受性喪失機序はAR変異や共役因子の観点から近年少しずつ解明されつつあるが、AR感受性亢進のメカニズムはまったく不明であり、本研究が分子生物学的レベルにおける機序解明の糸口となる可能性がある。 本年度の他の特筆すべき成果として、我々は独自に樹立したアロマターゼ活性を高発現するヒト卵巣顆粒膜細胞株KGN細胞を用いて、ELISAを用いた新しいアロマターゼ活性の測定キットを開発した。今後、アロマターゼ活性を指標とした性分化研究への応用が期待される。
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