研究概要 |
性ホルモンは、性分化の終末段階の雌雄発現に必須で、その合成や作用の異常は様々な性分化異常を引き起こす。本申請研究ではアンドロゲン受容体(AR)作用機構エストロゲン合成酵素(aromatase)活性と内分泌攪乱物資,PKAのAd4BPの活性化機構と胎児期副腎、性腺形成の関連,核内受容体LRH-1と卵巣分化の4つのテーマについて研究テーマを掲げ、平成17年度にはアンドロゲン作用機構におけるARの基礎的研究を中心に研究を進めた。フォークヘッドファミリーに属するFoxH1は個体初期発生においてTGF-β/アクチビンシグナルのコファクターとして、Smad2/4と標的遺伝子転写調節配列上で複合体を形成し、その転写を促進することが知られている。我々は、このFoxH1がリガンド非依存的にARの転写活性を抑制していることを明らかにした。免疫沈降法、Two-Hybrid法を用いてFoxH1が直接AR結合し、AF1の機能を抑制しているメカニズムを解明した。さらに、このFoxH1によるAR活性抑制はSmad2/4の共発現により解除されるが明らかとなり、ARシグナルとTGF-β/アクチビンシグナルの相互作用が明らかとなった。FoxH1はARの新しいコレプレッサーとして作用することから、個体発生過程におけるアンドロゲン受容体を介した性分化機構にTGF-β/アクチビンシグナルがFoxH1を介して抑制的修飾を行なう可能性がある(JBC280:36355,2005)。さらに卵巣性アロマターゼの発現を核内受容体のPPARγ:RXR系が抑制することを既に見出していたが、そのメカニズムはaromatase遺伝子に対する直接的抑制ではなく、PPARγ:RXR系がNF-kBによる卵巣性aromatase活性の促進調節を抑制することによることを見出した(Endocrinology 146,85,2005)。また性分化異常症として臨床的には生理を有し、白衣高血圧のみを呈した世界でもっとも軽微な臨床症状を呈した17α-hydroxylase欠損症の分子基盤(JCEM90,2508,2005)とアンドロゲン受容体異常症におけるAR転写活性化能の低下にAR核移行の低下が関与していることを明らかにした(JCEM90:6162,2005)。
|