研究概要 |
1. ステロイド産生細胞再生研究 : 我々はマウス及びヒト間葉系骨髄細胞を調整し、アデノウイルスに搭載したSF-1遺伝子の導入により、各種ステロイドを産生する細胞の創出に成功している(Genes Cells 9 : 1239, 2004、J Mol Endocrinol 39 : 343, 2007)。本年度の成果として、同一個体マウスの脂肪組織と骨髄組織からそれぞれ間葉系幹細胞を調整し、SF-1遺伝子を導入したところ、脂肪由来間葉系細胞においても骨髄由来同様、ステロイド産生能を認めた。ステロイド産生細胞への分化能を示した両細胞系の表面マーカーは差異を認めなかった(造血細胞特異的なCD45陰性、単球/マクロファージ系マーカーのCD11b陰性、造血系および間葉系の幹細胞・前駆細胞マーカーであるc-kitとSca-1は共に陽性)。しかしながら, SF-1遺伝子発現効率を上げていくと、骨髄由来間葉系細胞は副腎系ステロイドよりも性腺系ステロイド産生性が強く、一方、脂肪由来間葉系細胞はその逆のパターンを呈し、同じ間葉系幹細胞でも由来組織によってステロイド産生lineageが異なることが示された。上記所見は副腎あるいは性腺特異的細胞形質を獲得するためのスイッチング機構の一つとして、SF-1発現量が関与する可能性を示唆した(Endocrinology 149 : 4717-25, 2008)。 2. 脳内アンドロゲン受容体作用機構に関する研究 : 我々はテストステロン(T)の抗肥満作用機序の一つとして、オスアンドロゲン受容体(AR)KOマウス解析結果からT-AR系によるエネルギー消費の亢進機構を想定し、研究を進めている。その中で交感神経系の刺激活性を介してエネルギー消費を亢進させるレプチンとARのクロストークの可能性を仮説として考え、検証研究を進めた。弓状核をはじめとする視床下部諸核においてARがレプチン受容体と共局在することを観察した。またin vitroの系で、ARがリン酸化STAT3を介したレプチンシグナルを増強することを見出した。すなわちレプチン刺激下のレプチン受容体の活性化に伴い、下流のSTAT3がリン酸化され、細胞質から核内へ移行し、標的遺伝子(APRE, POMC, SOCS3等)の転写を活性化するが、ARの存在はこの反応をさらに増強する方向で作用していることを見出した。 (以上、Endocrinology 149, 6028-6036, 2008)。
|