高等動物の泌尿生殖系形成は、排泄物を出す器官を作り、交接に必要な精子、卵子を排出、受け取る系を胎児後部に協調的に構築する遺伝子ネットワークを必要とする。これまでそうした遺伝子ネットワークについてはほとんど解明されていなかった。本年度は、マウス外性器形成の伸長に必要な遺伝子群、さらに尿道、海綿体、亀頭部などに分化していく際に必要な遺伝子群を網羅的にインサイチュハイブリダイゼーションによってスクリーニングを行い、 1.外生殖器ができる前の発生場として総排泄腔膜に発現する遺伝子、その近傍間葉に発現する遺伝子群(これらは将来の腹壁、膀胱、膣形成プロセスにも関連する) 2.外生殖器が伸長する際の、我々が世界で初めて同定した先端上皮(DUE)において発現する遺伝子群 3.外生殖器が伸長、分化する際、尿道が取り込まれる上皮-間葉において発現する遺伝子群 4.外生殖器が胎生後期に性ホルモン影響下に性分化を行う際に、男性器、女性器において異なる形で発現制御を受ける遺伝子群 の各々の遺伝子群の同定を試みた。その結果総計で300種以上の遺伝子発現パターンスクリーニングし、以上のカテゴリーいずれにも相当する遺伝子群、細胞増殖因子群、転写因子群を同定した。この中の数十個に関して現在ノックアウトマウスやOrgan cultureを用いた機能解析系において現在解析を進めている(一部現在投稿準備中)。 以上のような解析は近年生殖器の発生異常や不妊などの頻度がヒトにおいて上昇していることが報告されていること、さらに分子発生生物学的観点からも重要な情報を提供すると期待される。
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