平成20年度においてはこれまでの研究を踏まえ、多くの成果を重要な国際学術雑誌に発表した。上皮組織の適正な分化は生殖器官形成や他の器官にとって重要である。Wnt/βカテニンシグナルを過剰に発現する遺伝子改変マウス、並びにWntシグナルとクロスしうるBmp(骨形成因子)、ヘッジホッグシグナルの複合変異体マウスを解析した。上記過剰発現マウス解析から、皮膚においては毛包の過剰形成が見られる事、子宮内膜においては子宮腺の過剰形成が見られる事が判明した(Development2009、並びに未発表データ)。現在子宮腺の過剰形成において細胞増殖因子の相互作用を解析中である。またWnt/βカテニンシグナルが外生殖器において、その雌雄形成プロセスに深く関わっている事が判明した。雄の外生殖器においてWnt/βカテニンシグナルの信号入力が雌に比べて亢進している事、また雌においては同シグナルのアンタゴニストであるDkk2などが過剰発現していることを見出した。複合遺伝子改変マウスの解析によって、Wnt/βカテニンシグナルの操作によって、外生殖器の"性"をホルモンに依存しない形で改変できることが初めて明らかとなった(Molecular Endocrinology印刷中)。これら論文を含めて現在、外生殖器の先端において我々が見出した尿道先端上皮(DUE)の意義と外生殖器発生におけるWnt、ヘッジホッグ、Fgfシグナルを含めた細胞増殖因子のクロストークの意義を現在さらに論文執筆中である。
|