我々は、多細胞動物における無性生殖から有性生殖への転換機構について解明するために、1個体に由来し、20年近くにわたって一度も性個体を生じたことの無いリュウキュウナミウズムシ(Dugesia ryukyuensis)の無性系クローン(OH株)個体に、有性生殖のみを行うと考えられているイズミオオウズムシBdellocephala brunnea)の成熟個体を餌として与えることによって、比較的速やか(1週間程度の処理)かつ確実(有性化率100%)に有性化させる実験系を確立した。 本研究課題では、1)有性化物質の完全精製と構造の決定、2)有性化に係わる遺伝子群の網羅的解析、有性化現象のEST解析とデータベースの構築及び、各有性化ステージにおけるマイクロアレイ解析、3)致死量X線照射個体への新生細胞の移植実験を用いた全能性幹細胞といわれる新生細胞の分化能力の解析、4)染色体の異常な挙動に関わると予想されるテロメア・テロメレース系の解析、5)DNAのメチル化によるゲノムレベルの質的、量的変化について解明することを目的として行った。 特に1)については逆相クロマトグラフィー、ゲル濾過クロマトグラフィー、陰イオン交換クロマトグラフィーにより分画し、投餌により活性をチェックした。その結果、分子量500以下の低分子であることがわかった。2)については、有性化個体cDNAライブラリーから10000クローンの配列を決定し、2500クラスターの存在を確認した。これらのクローンについてアノテーションを終了し、データベースを作成し、ホームページ(http://planaria.bio.keio.ac.jp/planaria/)を公開した。
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