研究概要 |
本研究の目的は、2種の魚類(メダカとティラピア)を主な実験モデル動物として、性決定遺伝子の発現の有無で開始する生殖腺(XX、XY)の性決定/分化の分子メカニズムを明らかにすることである。平成18年度には以下の研究成果が得られた。 1)性決定(メダカ) 遺伝的雌XXメダカに性決定遺伝子DMYを導入することにより(Gain-of-functionの実験)、XX生殖腺でありながら、性分化期から成熟期までXY生殖腺と同様な形態的特徴を示す生殖腺(精巣)を形成させることに成功した。性決定遺伝子を導入したXX個体の成熟した精巣に妊性をもつ精子を作出することができたのは脊椎動物ではじめて例である。この結果から、メダカのX染色体とY染色体とは機能的にはDMY遺伝子をのぞいて同一であることが示唆され、脊椎動物の性染色体の進化の上で重要な知見を提供した。 2)性分化(ティラピア) Cyp17(17α,-hydroxylase/17, 20 lyase、ステロイド代謝酵素の一種)は、魚類の生殖腺と頭腎には2種類の遺伝子(これまでに見つかっていたCyp17a1と今回新しく見つかったCyp17a2)があることを発見した。またそのうち、Cyp17aは性分化期のXX、XY生殖腺のいずれにも発現がみられたが(XX生殖腺での発現がXY生殖腺より強い)、新規のCyp17a2はXX生殖腺では艀化5日後から発現が認められるのに対し、XY生殖腺では艀化70日後(減数分裂が開始する時期)になりはじめて発現が見られることが明らかになった。このことから、Cyp17a1は減数分裂誘起に重要な役割を果たすことが推察され、生殖腺の性分化にも何らかの役割を果たしていることがはじめて示唆された。
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