本研究の目的は、2種の硬骨魚類(メダカとティラピア)を主な実験材料に用いて性決定/分化の分子メカニズムを明らかにすることであるが、平成20年度には卵黄分化に果たすR-spondinlの役割を重点的に解析した。遺伝的に雌(XX)であるメダカ受精卵でRNAi法によりR-Spindinl遺伝子の機能をノックダウンさせ、孵化後40日まで飼育すると、XX個体でありながら精巣が形成された。形成された精巣には種々の発達過程にある生殖細胞(精原細胞、精母細胞、精細胞、精子)とともに、体細胞(セルトリ細胞)ではgsdf遺伝子の強い発現が認められた。以上のR-spondinlのloss-of-functionとgain-of-functionの実験結果から、R-spondinlはメダカの卵巣分化に不可欠であると結論された。一方、精巣分化に関しては、gsdf(TGF-β系の成長因子)の役割を解析した。メダカの遺伝的雌雄の性分化期におけるgsdf遺伝子の発現を解析したところ、孵化2日前頃から発現が現れはじめ、その後も上昇を続けた。この時期におけるgsdf遺伝子の発現細胞は生殖細胞を取り囲む体細胞(セルトリ細胞)であることが明らかになった。今後、精巣分化におけるgsdfと性決定遺伝子dmyとの関連を調べる必要がある。なお、本年度の上記研究の過程で、RNAi法を用いた遺伝子ノックダウン法を新しく開発した。この方法を用いることで、メダカで長期間にわたる遺伝子ノックダウンの影響を解析することがはじめて可能になった。
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