研究概要 |
生殖腺(精巣と卵巣)は動物の生殖活動にとって不可欠な組織であり,その機能は視床下部-脳下垂体-性腺から構築される功妙な内分泌系によって調節されている。この内分泌系における生殖腺機能の調節は極めて重要で,動物個体の性分化に密接に関わる。本研究では,生殖腺で発現する遺伝子に着目し,その発現調節機構を明らかにすることで生殖腺における性分化機構,ならびに動物個体の性分化機構の解明を目指している。本年度においては、(1)酵母ツーハイブリッドスクリーニングによってAd4BP/SF-1と相互作用する因子として単離されたVinexine遺伝子の機能を遺伝子破壊マウスを作製することで解析した。このマウスは顕著な形態的異常を示さず、雌雄ともに妊性を有していたが、胎仔生殖腺における雄マーカー遺伝子の発現が一過性に低下していた。VinexineはMAPKカスケードを調整していることから、MAPKカスケードの雄生殖線における役割を示唆するものであった。また、(2)遺伝子破壊マウスの解析を通じて、M33遺伝子とAd4BP/SF-1遺伝子の機能的相関を検討した。両遺伝子の破壊マウスは生殖腺、副腎、脾臓に共通して異常を呈すること、M33遺伝子破壊マウスではAd4BP/SF-1遺伝子の発現が低下することなどが明らかになった。実際に、M33がAd4BP/SF-1遺伝子の上流と下流に結合することで、この制御を行っている。(3)視床下部腹内側核は雌の性行動を制御する神経核として知られる。Ad4BP/SF-1遺伝子はこの神経核に特異的に発現する。この神経核の機能制御を調べるために、Ad4BP/SF-1遺伝子の視床下部腹内側核における発現を規定するエンハンサーを調べたところ、Ad4BP/SF-1遺伝子の第6イントロンに存在することが明らかになった。
|