研究概要 |
本年度における代表的成果は下記の通りである。 <単一遺伝子疾患としての性分化異常症> 1.Ad4BP/SF1変異の同定:Ad4BP/SF1は、副腎と性腺の形成とステロイド産生、および下垂体ホルモン産生など、多様な段階で性分化を規定する。われわれは、正常副腎機能と精巣形成不全を有するXY女性3例においてAd4BP/SF1を同定した。さらに、フレームシフトを生じる18de1C変異では、機能解析により短縮蛋白が機能喪失変異であることを証明した。この成績は、Ad4BP/SF1変異が性腺形成不全の責任遺伝子の1つであることを示すものである。 2.POR遺伝子異常症の臨床像と疾患成立機序の解析:PORは、ミクゾーム内の電子伝達に必須の因子である。われわれは、POR遺伝子異常症を15例同定し、本邦ではR457Hが創始者効果により高頻度に存在すこと、および、多彩な臨床症状がCYP51A1,CYP17A1,CYP21A2,CYP19A1の骨、性腺、副腎、胎盤における活性低下によって説明されることを見いだした。そして、患児、胎盤、母体のステロイド産生が、互いに影響して臨床像に関与することを明確とした。 <多因子疾患としての性分化異常症> 1.エストロゲン受容体α遺伝子(ESR1)のハプロタイプ解析:停留精巣患者63例と健常者100例を解析し、ハプロタイプブロックがESR1遺伝子3'側のSNP10-14を包含する約50kb領域に存在すること、AGATAハプロタイプの推定頻度が、患者34%、健常者21%で有意に異なること(P=0.009)、このハプロタイプのホモ接合体頻度が患者10/63、健常者2/100で顕著に異なること(P=0.005、オッズ比9.25)を見いだした。この成績は、劣性効果を有するESR1の特定ハプロタイプが内分泌撹乱物質による停留精巣の発症に関与することを世界で初めて示すものである。
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