研究概要 |
本年度における代表的成果は下記の通りである。 <単一遺伝子疾患としての性分化異常症> 新規性分化異常症責任遺伝子CXorf6の同定と機能:解析:われわれは、X染色体長腕から新規性分化異常症責任遺伝子CXorf6を同定した。CXorf6がNotchシグナル伝達に関与するMastermind like 2との相同性を有すること、非古典的Notch標的遺伝子であるHes3の転写活性化因子として作用することを見いだした。さらに、CXorf6の発現が、性分化遺伝子発現のマスター遺伝子であるSF1/AD4BPにより制御されていることを見いだした(PNAS投稿予定)。現在、Hes3の精巣内発現パターン解析と卵巣機能不全患者における変異解析を行っている。さらに、CXorf6ノックアウトマウス作製を開始し、既にクローンを獲得している。 胎児期・乳児期特異的男性ホルモン産生経路の同定:男女共通の外陰部異常症、副腎機能不全、骨系統疾患などを特徴とするPOR遺伝子異常症という新規単一遺伝子疾患を29例の患者で同定し、この疾患がペルオキシゾーム内のP450酵素群に関与する電子伝達系異常により引き起こされることを明確にした。そして、この外陰部異常症発症には、胎児期・乳児期特異的男性ホルモン産生経路が決定的な役割を果たしていることを患者の尿ステロイドプロフィール解析により世界で初めて見いだした。この発症機序は、現在21水酸化酵素欠損症で試みられている胎児治療が応用できるものであり、今後の展開が期待される。 <多因子疾患としての性分化異常症> 内分泌撹乱物質感受性多型の同定:われわれは、既にエストロゲン受容体α遺伝子の特定ハプロタイプ(AGATA)のホモ接合性が,おそらく内分泌撹乱物質のエストロゲン様効果に対する感受性を亢進させることで尿道下裂発症に顕著に寄与することを見いだした(ホモ接合体頻度、尿道下裂患者11/43対正常男児2/82,P=0.000057、オッズ比13.75、95%信頼区間2.89-65.53)。本年度は、エストロゲン受容体β遺伝子(ESR2)のハプロタイプ解析を終了し(現在、遺伝統計学的解析中)、内分泌撹乱物質に関連しうる遺伝子において383個のtag SNPを対象とする網羅的解析を開始した。
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