研究概要 |
平成20年度は, 光合球系II膜蛋白質複合体(PSII)の結晶構造解析と機能解析に関し, 以下の研究成果を得た. (1)好熱性ラン藻の培養条件, PSIIの精製と結晶化の条件について最適化の作業を継続し, これまでで最高となる2.9Å分解能の回折強度データを得ることに成功した. 現在このデータに基づいて構造精密化作業を進めている. (2)PSIIに内包されるマンガンクラスターは, 水を分解して空気中に分子状酸素を放出している. その詳細構造は世界中の光合成研究者から注目されているが, 激しいX線損傷のためにその構造はいまだ確定していない. 我々は昨年度,新たに開発したX線損傷低減法を適用して, X線損傷前の構造に対応する回折強度データの収集に成功した. 現在このデータに基づいて構造精密化作業を進めている. (3)PSIIの全体構造は既に報告されているものの, 10種類を越える低分子量の膜貫通サブユニットの内3種類についてはその位置が同定されていない. 我々は, Tcf12欠失変異体を利用してその結晶構造解析と機能解析を完了させ, その配置を確定させることに成功した. (4)PSI工のマンガンクラスター近傍に存在するC1^-イオンは酸素発生反応の活性発現を制御していることが知られている. 我々はこのC1^-イオンをBr^-イオンとI^-イオンに置換した試料について結晶構造解析を行い, C1^-イオンの位置を世界で初めて確定させることに成功した. 本年度はそれぞれの構造精密化を完了して, 各イオンを取り巻く分子構造と酸素発生活性制御機構との関係について議論を展開した.
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