研究概要 |
平成21年度は,光合成系II膜蛋白質複合体(PSII)の結晶構造解析と機能解析に関し,以下の研究成果を得た. (1) 好熱性ラン藻の培養条件,PSIIの精製と結晶化の条件について最適化の作業を継続し,最近これを著しく改善することに成功し,現在はこのデータに基づいてPSIIの構造精密化を進めている. (2) PSIIの酸素発生反応に塩素イオンが不可欠であることはよく知られていたが,これまで,その結合部位や詳細な機能は明らかにされていなかった.我々は,塩素イオンを臭素イオンまたはヨウ素イオンで置換したPSIIの結晶構造解析を行い,Mn_4Caクラスターの両側に2つの塩素イオンの結合部位を見いだした.これらの塩素イオンはいずれもMn_4Caクラスターの構造安定化に寄与し,また酸素発生に伴って出入りする水やプロトンが通過するチャンネル構造の維持に寄与している. (3) Ycf12(Psb30)を欠失させた変異体の結晶構造解析から,その位置を同定することができた.またPsbZの欠失により,PsbKとYcf12がPSIIに結合できなくなることが明らかとなり,PSIIの構造構築過程では,PsbZがPsbKとYcf12をPSIIへ誘導して結合させることが示唆された (4) 好熱性・好酸性紅藻Cyanidium caldariumからPSIIを精製し,結晶化と脱水処理の条件を改善することにより分解能3.5Aの回折強度データを収集して,そのX線結晶学的解析を進めた.その結果,結晶の空間群はラン藻のPSIIの場合と同様P2_12_12_1でありながら,その非対称単位にはPSIIのテトラマーが含まれていることが判明した.
|