本年度は、生体超分子が機能を発揮する素過程を高解像度で観測するための大規模分子シミュレーション法の開発に重点をおいて研究をおこなってきた。具体的には、超並列計算機を最大限に活用して効率的に分子シミュレーションを実行し、フェムト秒・オングストローム程度の時空間解像度で生体超分子の機能発現の素過程をコンピュータ上で実現するための、手法・ソフトウエアシステムの開発を目標としている。 そのために、まず超並列計算を可能にするために空間分割をもちいて各CPUへの負荷分散と通信の軽減をおこなった。更にロードバランスをとることでPCクラスターでも効率的に並列計算が可能となった。これは1000BaseTなどの安価なネットワークでも並列計算が十分実用に耐えるレベルで行えることを示したものである。また、地球シミュレータのようなベクトル計算機でも十分なベクトル化効率が得られた。この部分は日本原子力研究所のグループと協力して行った。 また、効率的なシミュレーションを可能にする生体超分子の粗視化モデルの開発についても着手している。分子シミュレーションで観ることができないマイクロ秒からミリ秒での現象を観測するため、より効率的に機能のメカニズムを研究するための粗視化モデルを新たに構築し、シミュレーションを実行するシステムを創出する。そのために、まずアトムパッキングが変わりうるが相互作用がレナードジョーンズ的に単純化されたモデルを用い、テスト計算を開始している。
|