研究概要 |
本研究では主に下記を研究目標としてきている。(1)生体超分子が機能を発揮する素過程を高解像度で観測するための大規模分子シミュレーション法の開発、(2)分子シミュレーションを用いた生体超分子の立体構造構築・精密化法の開発、(3)効率的なシミュレーションを可能にする生体超分子の粗視化モデルの開発である。 これらの目的を達成するために、これまで具体的には下記の成果を得てきた。まず第1に、最も標準的な分子シミュレーション法である分子動力学法を超並列で計算するというソフトウエアのコア・自由エネルギー計算および標準的解析の部分が完成し、現在ソフトウエア公開に向けた準備をおこなっている。第2に、計算精度を保ったままサンプリング効率を向上させるための手法開発の一つとして、複数の安定状態の存在が知られている生体高分子・超分子に関して、安定状態間を遷移する素過程を観測するシミュレーション法の開発をおこなった。既に既存プログラムを改良する形でおこなったべん毛系におけるシミュレーションでは、多数の安定状態間をトルクによって遷移させることに成功した。第3に、現状のシミュレーション法の精度的問題点を様々な角度から検証している。蛋白質の長時間シミュレーション結果の解析からは、分子全体の回転拡散はシミュレーション系の大きさに依存しないが、並進拡散は大きさに依存することを明らかにした(Takemura & Kitao J.Phys Chem.B.2007)。現在、この問題の補正法の開発を進めている。また、超分子を構成する蛋白質で構造変化をある程度予測し、これを用いて超分子の全体構造のモデリングを行うことでべん毛フック全体構造を効率的にモデリング(Furuta, et. al.,J.Struct.Biol.2007)や、比較的小さなモデル系でマルチスケールシミュレーションを検証をおこなった。
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