研究課題
腸球菌Enterococcus faecalisの病因物質ゼラチナーゼの発現制御にかかわるペプチドフェロモンGBAPの生合成および輸送膜タンパク質FsrB、受容体膜タンパク質FsrC、および転写活性化因子FsrAについて、大腸菌Escherichia coliを宿主とする組換えタンパク質発現系を構築し、発現・精製・結晶化・X線結晶構造解析を進めている。昨年度、フェロモン受容体膜タンパク質FsrCを大腸菌を宿主として発現させ、培地1Lあたり0.3mgの精製FsrCを得た。その後、結晶化条件探索の結果、ポリエチレングリコールを沈殿剤として柱状の微結晶(10x10x60μm3)を得、この結晶はSPring-8 BL41XUで9.3Å分解能まで回折した。今年度、沈殿剤濃度、pH、添加剤、フェロモンGBAPとの共結晶化などの結晶化条件の最適化を進め、現在までに20x20x200μm3の結晶が得られ、SPring-8 BL41XUで5.5Å分解能まで回折した。今後も、結晶化条件の最適化を最優先して進め、高分解能の回折データ取得を目指す。受容体膜タンパク質FsrCの結晶化と並行して、フェロモンGBAP(11残基の環状ペプチド)の構造・機能解析を行った。GBAPのアラニンスキャニング変異体の活性測定の結果、N末端領域はGBAPの活性に重要でないが、環状構造領域は極めて重要でどのアミノ酸を置換しても活性が失われた。一方、2次元NMRによる溶液構造解析の結果、GBAPは環状領域も含めて、溶液中で柔軟な立体構造を有することが示され、GBAPが受容体FsrCに結合する際GBAPの環状構造領域がinduced fitすると示唆された。また、放線菌由来のGBAPのアンタゴニストとしてsiamycinを同定した。FsrCとsiamycinの複合体の結晶化も試みる予定である。受容体膜タンパク質FsrCは、N末端側の7回膜貫通領域とC末端側の細胞内ヒスチジンキナーゼ領域とに区分できるが、上述の全長膜タンパク質の結晶化のほか、細胞内ヒスチジンキナーゼ領域(FsrCC)の発現にも成功した。現在、FsrCC単独、FsrA単独、およびFsrCC-FsrA複合体の結晶化実験も行っている。
すべて 2006
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