研究概要 |
腸球菌Enterococcus faecalisの病因物質ゼラチナーゼの発現制御にかかわるペプチドフェロモンGBAPの生合成および輸送膜タンパク質FsrB、受容体膜タンパク質FsrC、および転写活性化因子FsrAについて、大腸菌Escherichia coliを宿主とする組換えタンパク質発現系を構築し、発現・精製・結晶化・X線結晶構造解析を進めている。 昨年度に引き続き、フェロモン受容体膜タンパク質FsrC単独およびFsrC-GBAP複合体の結晶化条件の最適化を進めた。今年度、培養条件の検討により発現量・菌体収量が改善し、大腸菌1L培養あたりの精製FsrCの収量が0.3mgから1.0mg以上に向上した。結晶化のための界面活性剤の検討を行い、DDMミセル存在下でのFsrCのゲルろ過分析では、活性型と予想される2量体FsrCがDDMミセルに埋め込まれた分子量約150kのピークよりも、FsrCが会合して排除体積に溶出されたピークの方が数倍程度大きかったが、n-octyl-β-D-glucopyranoside(C8G)やn-nonyl-β-D-glucopyranoside(C9G)を添加してゲルろ過分析すると会合体のピークがほぼ消失したため、会合状態にあったFsrCが解離したと判断した。他の8種類の界面活性剤(C9M,C10M,C12E8,C12E9,LDAO,C12-sucrose,CYMAL6,C14M)には、会合体解離促進効果は見られなかった。この結果に基づき、DDM-OG,DDM-NGの混合ミセル中やOG,NGに界面活性剤を置換した後、FsrC-GBAP複合体の結晶化条件を探索し、これまでにPEG3350を沈澱剤とするいくつかの条件で六角形の板状結晶が得られている。今後さらに結晶化条件の検討を進め、高分解能回折データの取得に結びつける予定である。
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