研究概要 |
FsrCの凝集を抑制しつつ精製する方法の確立、会合状態の決定、GBAPとの結合解析-界面活性剤で細胞膜から可溶化した後のFsrCの凝集を防ぐため、超音波破砕の使用をやめ、低張液を用いて菌体破砕し、絵筆とスターラーバーを用いて穏やかに膜から可溶化した。この結果、ゲルろ過クロマトグラムで排除体積に溶出されるFsrC凝集体のピークがほぼ完全に消失した。FsrC-DDMミセル複合体は、Blue Native PAGEで約200kDa、ゲルろ過で約150kDaで挙動し、可溶化FsrCが2量体で存在することが示された。膜からの可溶化後、LDAO,DM,DDM中で精製したFsrCについて、表面プラズモン共鳴から、LDAO中の解離定数(K_D)=88nM、DM中のK_D=440nM、DDM中のK_D=350nMという値が得られた。GBAPの最低有効濃度が10nMであることから、脂質二重膜中ほどではないが、ミセル中のFsrCもGBAP結合能を保持していることが示された。 GBAPの溶液構造決定とアンタゴニスト創製-GBAPのFsrC結合部位を特定するため、種々のGBAPアナログを合成し、GBAPの構造機能相関研究を行った。その結果、N末端の突出領域は活性に関与せず、環領域内のPhe7とTrp10の2つの芳香族側鎖が受容体結合に大きく寄与していることが示唆された。一方、Phe7,Trp10以外のアミノ酸残基をすべてAlaに置換したGBAP誘導体は弱いながらアンタゴニスト活性を有することが示された(IC_<50>=200μM)。さらに数残基を本来のアミノ酸残基に戻すことでIC_<50>=5μMまでアンタゴニスト活性を強めることができた。
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