研究概要 |
本研究は、T4ファージを対象として、分子集合機構および感染過程における各部品蛋白質の協同的役割、即ち作動原理を分子・原子レベルで明らかにしようとするものである。本年度の成果は下記の通りである: 1.T4ファージ基盤ハブ複合体及び各構成成分の単離 ハブ(基盤中心部)の形成に関与する6つの蛋白質のうち、gp5,gp27,gp29(ものさし蛋白質)は構造体に組み込まれていることが明らかだが、gp51は触媒的に関与することが知られている。しかし、残りのgp26,gp28の機能は不明である。gp28は膜蛋白質であるという報告があり、大量発現すると膜画分に見いだされるので、可溶化について検討する。申請する多角度光散乱検出器は精製した蛋白質の溶液中でのサブユニット構造についての重要な情報を迅速に得るために用いられる。 2.テイルリゾチーム変異体Ser351Leuはプロセッシングを起こさない変異株である。野生株ではプロセッシングの起こるSer351-Ala352近傍の約15残基の電子密度が得られなかったが、本変異体を結晶化してX線結晶構造解析解析を行った結果、すべての残基の電子密度を求めることが出来た。その結果、リゾチームドメインの基質認識部位が隣のサブユニットからのペプチドで占拠されているのはプロセッシングの結果ではないことが分かった 4.MuファージgpPの結晶化と構造解析。 Muファージの尾部基盤蛋白質gp44(gpP)の結晶化に成功した。既に結晶構造解析の予備的な結果も得られている。驚いたことに、3量体gp44の構造はこの蛋白質とはほとんど相同性のないT4ファージのgp27の構造に酷似した円筒状の構造であることが明らかになった。
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