研究概要 |
1. In vitroにおける基盤ウェッジ複合体の形成 T4ファージの尾部基盤周辺部を構成するウェッジは、gp11, gp10, gp7, gp8, gp6, gp53, gp25の7種の蛋白質がこの順番に結合して形成される。但し、gp11は例外で、分子集合のどの段階でも結合できる。本研究では、各蛋白質をそれぞれ別々に発現させた大腸菌を混合させてから溶菌させ、生じる複合体を精製するという方法によって、すべての中間体と完成したウェッジを調製することができた。その結果、Kikuchi & King(1975)のin vivoにおける分子集合経路が確認されたほか、gp53を添加した段階で、15.0Sの複合体が自発的に会合して、43.7Sの複合体を生じる事が分かった。電子顕微鏡観察の結果、この複合体はウェッジが6個集合した基盤様構造を持つことが分かった。(Yap et al. J. Mol. Biol, (2010) 395:349-360. 2. T4ファージspackle蛋白質(gp61.3)の結晶構造解析 T4ファージの溶菌阻止の機構を明らかにする目的で、この現象に関与することが知られている97アミノ酸残基からなるspacke蛋白質(Sp)の大量発現系を構築し、結晶化すると共に、X線結晶構造解析によって立体構造を決定した。現在、gp5との複合体の結晶化を目指している。 3. ビブリオファージKVP40のORF334 T4ファージのgp27はgp5に結合してヘテロ6量体を形成し、テイルリゾチームと基盤の他の構造とのリンカーの役割を果たすが、配列の比較からはgp27に相当するKVP40の遺伝子産物は検知されなかった。しかし、遺伝子5の近くに存在するT4gp27とほぼ同じ大きさのORF334をgp27ホモログの候補としてクローニングし、発現、精製後、gp5への結合を調べた結果、超遠心分析により、gp5とヘテロ6量体を形成することが分かった。その結果、KVP40ファージのORF334はT4ファージgp27のホモログと結論された。(Nemoto et al. J. Bacteriol. (2008)190:3606-3612.
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