研究課題/領域番号 |
16087207
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
難波 啓一 大阪大学, 大学院・生命機能研究科, 教授 (30346142)
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研究分担者 |
今田 勝巳 大阪大学, 大学院・生命機能研究科, 助教授 (40346143)
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キーワード | 1分子計測(SMD) / 電子顕微鏡 / ナノバイオ / ナノマシン / 分子モーター |
研究概要 |
細菌の運動器官であるべん毛は、20数種類の蛋白質から構成される生体超分子で、回転モータである基部体、らせん繊維型プロペラとして働くフィラメント、そしてそれらを連結してユニバーサルジョイントとして働くフックと、おおまかに3つの部分からなる。べん毛フィラメントはフラジェリンが非共有結合でらせん状に重合したチューブ構造で、極低温電子顕微鏡像の画像解析による構造解析法の長年にわたる工夫によってその原子モデルの構築に成功し、2003年8月のNatureに発表した。 フックの構造はフィラメントに比べて短く、電子顕微鏡だけによる高分解能構造解析が困難であったため、その直線型チューブ構造についての低温電子顕微鏡像の画像解析法による低分解能立体像と、サブユニット蛋白質FlgEフラグメントのX線結晶構造解析法による原子モデルを組み合わせ、擬似原子モデルを構築することに成功した。されにこのモデルをもとにして、通常働いている構造である、曲がったフックの原子モデルを構築し、ユニバーサルジョイント機能を果たす際に、フック蛋白質FlgEの構造とその分子間相互作用がどのような変化を示すかを詳細に調べた。この原子モデルをもとにした計算機による分子動力学シミュレーションにより、ドメイン間の相互作用表面で、ある一定数の水素結合やファンデアワールス接触点を保ちつつ、結合相手の原子を順次替えることで相互に滑りを起こし、各素繊維の周期構造が約30%にもおよぶ伸縮を実現して、ユニバーサルジョイント機能を実現していることが明らかになった。(Samatey et al. Nature 2004) べん毛の自己構築過程においては、フックの完成とともに基部体の細胞質側にあるべん毛蛋白質輸送装置が、それまでのフック型蛋白質輸送モードから、フラジェリンなどのフィラメント型蛋白質輸送モードに切り替わることで、フックの長さが約55nmに制御され、それ以後はフィラメントの成長が起こる。このフックの長さを制御する2つの蛋白質の1つFliKの構造について詳細に調べた結果、N末ドメインがフックの長さをモニターしていること、C末ドメインがべん毛蛋白質輸送装置の輸送モード切替を引き起こしていることなど、新たな知見が得られた。(Minamino et al. J.Mol.Biol.2004) その他、基部体の軸を構成するロッド蛋白質のキャラクタリゼーションなど、様々な新しい知見が得られ、べん毛超分子の構造と機能の連関が徐々に明らかになりつつある。
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