研究課題/領域番号 |
16087207
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
難波 啓一 大阪大学, 大学院・生命機能研究科, 教授 (30346142)
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研究分担者 |
今田 勝巳 大阪大学, 大学院・生命機能研究科, 助教授 (40346143)
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キーワード | 1分子計測(SMD) / 電子顕微鏡 / ナノバイオ / ナノマシン / 分子モーター |
研究概要 |
我々のグループは、極低温電子顕微鏡による超分子立体構造解析の技術開発と、超分子を構成する各分子のX線結晶解析と電子線解析の相補的連携技術の開発を目指し、多面的な研究を進めている。 <電子顕微鏡解析の高分解能化を目指す技術開発> 電子顕微鏡による解析では、画像解析法の改良と共に、電子線照射損傷による高分解能情報の劣化を抑えつつ照射量を増やしてS/N化を上げることが高分解能解析の鍵でなる。そこで、エネルギー分光型極低温電子顕微鏡(日本電子JEM-3200SFC)を用い、細菌べん毛とリボソームを試料として撮影条件の最適化を進めた。照射線量やデフォーカス等のパラメータを様々に変え、画像解析で得られる密度図の分解能を指標として、照射量増加によるS/N比の向上と損傷による高分解能情報の劣化のトレードオフを定量的に解析した。その結果、考えられている限界以上に分解能の劣化をともなわない照射が可能であることがわかった。今後もデータ収集と定量解析を続行し、どこまで分解能の向上を図れるかに関して定量的な解析を行う。 <X線構造解析と電子顕微鏡解析の相補的連携を目指す研究> べん毛モータとべん毛繊維を連結するフックは、フック蛋白質FlgEが約130分子量合した長さ55nmのチューブ状構造体で、べん毛繊維がどこを向いてもトルクを伝えられるように、曲げに柔らかく捻れに強い構造を持つユニバーサルジョイントである。その分子機構を解明するため、FlgEのX線結晶構造解析と直線型フックの電子顕微鏡像解析を相補的に組み合わせ、直線型フックの原子モデルを構築し、さらに機能状態である曲がったフックの原子モデルを構築して、ユニバーサルジョイント機能に必須な分子間相互作用を同定した。 また、べん毛の他の部分構造についても解析を進め、べん毛輸送装置の構成蛋白質ではFlhAcやFliIの構造解析が完了し、興味深い動作機構が明らかになりつつある。べん毛フック長の決定機構にFliKがテープメジャーのように働くと同時に、FlhBcがフック重合制限時間を決めるタイマー機能を発揮することも明らかになった。今年度後半には高輝度X線回折装置(リガクFR-E、Cu/Cr切り替え式)を導入設置し、イオウ原子の異常分散による位相決定が可能になった。試料調整法の工夫により、べん毛の様々な部分複合体で均一な単分散試料が得られるようになり、べん毛各部の超分子構造が順次明らかになりつつある。
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