我々のグループは、極低温電子顕微鏡による超分子立体構造解析の技術開発と、超分子を構成する各分子のX線結晶解析と電子線解析との相補的連携技術の開発を目指し、多面的な研究を進めている。 <電子顕微鏡解析の高分解能化を目指す技術開発> 電子顕微鏡による解析では、画像解析法の改良と共に、電子線照射損傷限界まで電子線照射量を増やしてS/N比を上げることが高分解能解析の鍵となる。エネルギー分光型極低温電子顕微鏡(日本電子JEM-3200SFC)を用い、細菌べん毛の基部体、ポリロッド、輸送装置ATPaseであるFliIの6量体リングなどを試料として、試料調整法や撮影条件の最適化を進めて3次元再構成像を得た。現在も、より高分解能をめざした解析作業中である。また、タンパク質2次元結晶を用いた照射損傷のデータ収集により、分解能限界についての定量的解析を継続中である。電子線トモグラフィーが可能な傾斜機構付き極低温電子顕微鏡も、ようやく定常的に稼働するようになり、トモグラフィーを目指した技術開発を開始する。 <X線構造解析と電子顕微鏡解析の相補的連携を目指す研究> べん毛の部分構造についてはX線結晶解析を進め、輸送装置構成蛋白質のFlhAcやFliIの構造から、興味深い動作機構が明らかになりつつある。FliIについては電子顕微鏡像解析による6量体リングの構造にFliIモノマーの結晶構造を当てはめて、6量体リング構造の原子モデルを構築する作業が進んでいる。また、べん毛フック長の決定機構にFliKのC末端ドメインが果たす役割が明らかになりつつある。その他のべん毛構成蛋白質についても、試料調整法の工夫により、単量体や部分複合体で均一な単分散試料が得られるようになり、べん毛各部の超分子構造が順次明らかになりつつある。
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