研究課題
ウシ心筋チトクロム酸化酵素(Cc0)のX線回折実験条件の検討を継続しSPring-8で1.18A分解能の回折斑点を検出した。現在、1.4A分解能での水素原子位置決定を、方法の開発を進めながら推進している。Cc0のO_2還元とプロトンポンプ機構解明のために呼吸阻害剤結合のX線構造に及ぼす効果を検討した。その結果、(1) COは低温のときはCuB^<1+>にside-on型で、常温ではend-on型でFea_3^<2+>に結合し、NOはbent end-on型にFea_3^<2+>に結合していること、(2) Fea_3^<2+>に結合したCOもNOもCuB^<1+>から2.5A-以上離れており、相互作用は非常に弱いと考えられること、(3) 完全還元型CN-結合型では、CN-は水分子を導入しCuBからHis240-Tyr244を経由してFea_3に結合したCN-への電子伝達経路となりうる構造を形成することが明らかになった。一方O_2はFea_3^<2+>に結合したときスーパーオキシドに近い電子状態になっていることが赤外分光解析により明らかにされている。したがって、O_2結合型もCN-と同様に水分子を取り込んで上述の構造を形成すると考えられる。これらの結果はO_2結合による水分子の導入がO_2の1段階4電子還元の引き金になっていることを示唆している。さらに、COやNO結合によりH-pathwayの下部にある水経路の容積が大幅に減少した。この変化はプロトンポンプの逆流を防ぐことにより、エネルギー変換効率を高めることに寄与していると考えられる。NADH-ユビキノン還元酵素の二次元結晶化条件探索を継続し、氷包埋2次元結晶の電子線回折の観測に成功した。FIFoATPaseの二次元結晶の電子顕微鏡像も欠損のない酵素分子が結晶化きれたことを示している。これまで両酵素ともサブユニットの欠損のない結晶は得られておらず、これらの結果は極めて意義深い。
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