研究概要 |
イネ萎縮ウイルス(RDV)の粒子構造の顕著な特徴のひとつは内殻層がT=1で、外殻層がT=13と異なった対称性をもつ2層のタンパク質層から構築されていることである。これは各層のタンパク質に対応性がないことを意味し、生化学的な観点からは理解が困難な構造であるが、RDVと同属のイネ・ゴール・ドワーフ・ウイルス(RGDV)の外殻タンパク質との三次元ホモロジー解析、およびRDVの内殻タンパク質P3とRGDVの外殻タンパク質P8を遺伝子発現系で共発現させて得た粒子の解析から、主にタンパク質間の相補的静電ポテンシャルによることが、生化学的に証明された。 細胞に感染したRDVはウイルスのPns6,Pns11およびPns12から構成されるバイロプラスマの内部でウイルスの内殻を構成するP1、P3、P5およびP7が集積、ウイルス内殻粒子を形成、その後にウイルス粒子の外殻タンパク質P2,P3,P7がバイロプラズマの周縁に集積、アセンブリーすることによって粒子が構築されることが判明した。 酵母Two-hybrid法でRDVを構成するタンパク質間の結合を解析したところ、バイロプラズマを構成するPns12は自身のタンパク質と強く結合し、バイロプラズマ様構造体を単独で構築することが明らかになった。 RDVの外殻タンパク質P8の外部に異種ウイルスの主要抗原決定基となるポリペプチドを配置させて遺伝子発現させ、RDVの内殻粒子と結合させたキメラ粒子は本来の粒子よりもやや安定性に欠けたが、本ポリペプチドと単体のときよりも約100倍の希釈まで本ポリペプチドの抗体を検定することができた。
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