研究課題/領域番号 |
16087210
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研究機関 | 独立行政法人産業技術総合研究所 |
研究代表者 |
佐藤 主税 独立行政法人産業技術総合研究所, 脳神経情報研究部門, 研究グループ長 (00357146)
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研究分担者 |
川田 正晃 独立行政法人 産業技術総合研究所, 情報技術研究部門, 主任研究員 (20356843)
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キーワード | タンパク質 / 3次元構造決定 / 電子顕微鏡 / ナノテクノロジー / 画像情報処理 / ニューラルネット / グリッドコンピューティング / クライオ電顕 |
研究概要 |
1 ATPはエネルギー源としてのみならず、皮膚から中枢神経まで広く存在するP2XおよびP2Y型ATP受容体を介して、痛覚等に関する細胞間情報伝達物質として働く。我々は以前、負染色電顕画像を用いてP2X_2受容体の2次元平均化による可視化に成功し、全体として花瓶の様な形であること、また上部平均画像の三回対称性から3量体構造であることを直接的に証明した(2005 BBRC)。本研究では約9万枚のクライオ電子顕微鏡粒子画像と単粒子解析法を用いて、ATP非存在下でのP2X_2の3次元構造を再構築した。その結果訂P2X_2受容体は細胞膜を挟んだ上下に隙間の多い緩やかなサブユニット構造を持ち、イオンやATP分子の取り込み、排出等に役立つことが想定された。さらに本構造はATP刺激の強度に応じてイオン透過性が変化する、P2X_2受容体の特異なチャネル特性を反映しているもの思われた。また細胞膜を貫通するポアと推定される部分には部分的狭窄が認められ、電気生理学的研究から推定される構造と一致した。軽い接触が激しい痛覚として感じられる異痛症(アロデニア)や、通常の暖かさを暑さに感じてしまう遺伝病等の解明へも役立つことが期待される。 2 RECK(Reversion-inducing cysteine-rich protein with Kazal motifs)は細胞膜結合型のプロテアーゼインヒビターで、特にMMP(matrix protease)ファミリーの阻害を通じて哺乳類の形態形成や癌化等を制御する。実際、RECK欠損マウヌでは胎生致死を引き起こし、また多くの癌でRECKタンパク質の量が低下していること、その発現量が癌の悪性度と相関が高いこと等が知られている。本研究ではMMP2とMMP7で切断を受けることによりRECKの活性化が起こり、細胞機能制御に重要な働きを持つファイブロネクチンのMMP7による分解を抑制することを示した。さらに遺伝子導入細胞を用いてRECKタンパク質の発現・精製を行い、負染色電顕画像からの3次元再構成により大きな空隙と突起状構造を持つカウベル型構造が示された。その開いた領域でプロテアーゼと結合し、機能制御することで癌の転移等を抑える機構が推定された。
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