2005年7月から同10月にかけて、当該遺跡の225m^2の範囲において建物床面まで発掘調査を実施した。発掘調査には、当領域を構成する火山学、日本考古学、西洋史学、物理探査、3次元計測、地理学、農学等の各分野の研究者が参加し、本研究推進のためのデータ採集を行った。 出土遺構、建物装飾などは、3次元レーザー・スキャナ、オルソ画像などを駆使してデジタル・データ化に努めるとともに、適宜写真撮影を行い、以後の建築学、美術史学的研究推進のためのデータ整備に努めた。 遺構・遺物については、当遺跡の最終段階に属するものが多数採集され、時代を追った変遷を検証することができた。現在まで基礎的な整理・登録作業を継続中であり、その作業と平行して、個々の遺物の型式学的研究を進めている。 検出された遺構に関しては、できうる限り埋没前の状態を復元できるように、調査範囲の屋根掛け、構築物の理化学的手法を用いた保存・修復作業を、現地の保存修復科学研究者との連携のもとに実施した。 当遺跡は、紀元1世紀前半に創建され、その後、改築、廃絶、再利用などの変遷を経たこと、西暦472年のヴェスヴィオ山噴火に伴って発生した土石流によってきわめて短時間のうちに、そのほとんどが埋没したこと、西暦472年の噴火以降も、当地周辺は、幾度となく火山噴火災害に見舞われたことなどが、ほぼ確定した。また、先年来の踏査により、ソンマ・ヴェスヴィアーナ市域には、未調査のローマ時代遺跡が散在している可能性のあることなどが、遺物の出土状況、遺物研究、遺構研究、周辺環境の研究を通じて、より明らかになってきた。 また、現在までに調査の及んでいる範囲は、かなり大規模な建物群の一角を占めるものであり、その全体的な性格、建物群の配置状況などは、今後の継続的な調査が必要であることも確認された。
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