研究課題
2007年7月から同10月にかけて、既存調査範囲の北東方向におよそ150m^2の範囲を拡張して建物床面まで発掘調査を実施した。発掘調査には当領域研究を構成する各分野の研究者が参加し、本研究推進のためのデータ採集、各種解析研究を行った。遺構については、拡張された建物北東部分において、2006年に検出された巨大なアプシスを有する部屋に並んでもう一つ同規模のアプシスを有する部屋が検出され、この建物の壮麗さがますます追認されることとなった。またこうした遺構については、調査範囲の屋根掛け、構築物の理化学的手法を用いた保存・修復作業などを、現地の保存修復科学研究者との連携のもとに適宜実施した。遺物については、噴火罹災直前の時期に属するものの型式学的研究が進展し、地域的土器生産体制と地中海広域交流に基づく土器流通の様相を弁別することができた。今年度の調査によって、当遺跡の主要な建物は、紀元2世紀代の創建から、壁画の描かれた紀元3世紀後半までのおよそ100年間が、その本来の機能を保持していたモニュメンタルな施設であり、その後何らかの理由によって廃絶した後は、噴火による埋没まで手工業的作業場などに改変され利用されていた可能性が高まった。遺構の本来の性格に関しては、建物の構造や装飾から、公共性と宗教性がより一層クローズアップされることになってきた。一方、現在までに調査の及んでいる範囲は、かなり大規模な建物群の一角を占めるに過ぎないものであろうという認識には変わりはなく、この遺構を含めた遺跡全体が有するであろう社会的および文化的意義、あるいは、調査地周辺の、未だに埋没しているであろう建物群の配置状況などの把握には、なお継続的な調査が必要である。
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http://www.somma.l.u-tokyo.ac.jp/